夫婦の話し合いに役立つ【NVC】を夫婦の会話例で解説 ー話し合い基礎2

夫婦の会話が平和になるNVC

「分かり合えない」夫婦の話し合いを卒業し、対話の出来る夫婦になるために「知っておきたい」記事の2つ目です。

今回は、NVCというコミュニケーション手法について分かりやすくお伝えします。

【話し合い基礎1】はこちらから↓
夫婦の会話の「ズレ」が起こる原因がよくわかります。
相手の「地雷」が分からないとお悩みの方も是非。

目次

1.夫婦の会話を平和にする方法:NVCを解説します

家事の分担や仕事のストレス、子育ての問題など、夫婦の間にはさまざまな課題があります。

喧嘩にならないように伝えたいけれど、どうしたらいいのかわからない…。
そんな方も多いと思います。

この記事では、対話の出来る夫婦になるために役立つNVC(非暴力コミュニケーション)の基本を分かりやすく解説します。

さらに、夫婦の日常会話を通じて、NVCを使った夫婦のコミュニケーション改善方法をお伝えします。

NVCについて正確な内容は『NVC』や『分かり合えないを超える』をご参照ください

実際の生活に役立つ方法を一緒に見ていきましょう。

2. 夫婦の話し合いに役立つNVCとは

NVCは、マーシャル・B・ローゼンバーグ博士によって開発されたコミュニケーション手法です。NVCは、事実とともに「感情やニーズ(願い)」の共有を通じて、人間関係の「つながりの質」をよくすることを目的としています。

参考:NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法

ニーズ(願い)って何?

「ニーズ」について、聴きなれない方が多いと思うので、初めに解説します。

ビジネスなどでも使われれますが、NVCでは以下のような意味があります。

「ニーズ」とは、性別や年代・生まれた地域などに関係なく、誰もが持っている「生命を維持し、豊かにするために大切にしたい想いや価値観」

人間誰もが、その瞬間瞬間に、何かを満たしたくて生きています。その「何か」をニーズ(願い)と呼びます。

なぜ感情とニーズを伝えることが大切なの?

そもそもコミュニケーションには大きく2つのタイプがあります。

①情報のやり取り

情報のやり取りは、具体的な事実の情報を得たり物事を進めるために使います。

たとえば、「いつまでに、誰が、何を、どこに、どうやって、なにをした」などで表現されます。

「何をどうする」かを決めるやりとりは、「頭の話し合い」と言えます。

②気持ちのやりとり

気持ちやり取りとは、たとえば「今日は仕事で疲れていて、家に帰ってリラックスしたい」「怒らないでほしい」など、自分の感覚や思いを伝えることです。

自分や相手の「思い」を理解するために必要なやり取りです。

「疲れた」「寂しい」「すき」「きらい」などのやりとりは、「心の話し合い」と言えます。

夫婦がすれ違う原因と、NVCの必要性

コミュニケーションとは、「情報のやりとり」(=常識)だと私たちは教えて育てられてきました。

実際に日常や物事を進めるには、情報のやり取りが必要です。しかし、これでは自分が感じていること・望んでいることは、(私たちが思っているよりも何万倍も!)うまく相手には伝わりません。相手の思いもうまく受け取れません。

差し出されたハート

「情報のやりとり」では自分が感じていること、自分の心が求めていることには重きが置かれないので、自分自身でも「自分の思い」を適切に受け止めたり、表現する機会が少なくなります。

そうすると「心の扱い方」は未熟なままになってしまいます。

自分の心を適切に理解する方法を知らず、表現もままならない状態では、いざ困った時や必要になった時に「自分に思いを伝えよう」「相手の思いを受け取ろう」と思っても、なかなかうまくはいきません。

しかしNVCの考え方と手法を用いると、自分と相手の心を適切に理解し、受け取りあうことができます。

自分自身のためにもなるので、ぜひ最後まで読んで下さいね!

なるほど!会話はこう変えればいいのか!が分かります

NVCが必要な理由

情報のやり取りだけでは、お互いの本当の気持ちが分からないため、心のつながりを作りにくくなります。

しかし適切な方法を知ることで、お互いが何を大切にしているのかを理解し、信頼関係などの心のつながりを築くことができるようになります。

3NVCを使えばこんなに変わる!日常のコミュニケーション例

キリン語(NVC)とジャッカル(普段の言葉)の違い

NVCの創始者、マーシャル・ローゼンバーグ氏は、コミュニケーションのスタイルをわかりやすく説明するために、2つの動物を使ったメタファーを用いました。それが「キリン」と「ジャッカル」です。

キリン(NVCの象徴)

キリンの特徴

  • 心臓が大きい:キリンは地球上で一番大きな心臓を持つ動物です。これは、大きな心で他者を理解し、共感する姿勢を象徴しています。つまり、キリンは「おおらかで心が広いコミュニケーション」を体現しています。
  • 首が長い: 高い視点から物事を見ることができるため、状況を広い視野で捉えられます。これは、判断や偏見にとらわれずに、事実を客観的に観察する力を示しています。
  • キリンのコミュニケーション::キリンは、愛と共感を持って話します。

ジャッカル(暴力的コミュニケーションの象徴)

ジャッカルの特徴

  • 地面に近い: ジャッカルは地面に近い位置で生活しているため、視野が狭く、すぐに反応してしまいます。これは、判断や批判に基づく狭い視点を象徴しています
  • 攻撃的::ジャッカルは、しばしば攻撃的で防衛的な態度を取ります。これは、相手を非難したり、命令したりするコミュニケーションスタイルを示しています。
  • ジャッカルのコミュニケーション:ジャッカルは、批判と要求を持って話します。

ジャッカルとキリンの表現を比較

ジャッカルの表現

 「また散らかしっぱなし?」
「あなたって、本当にだらしないよね」

 キリンの表現

  1. 観察:昨日と今日、部屋の床にシャツや本が置かれてた。
  2. 感情:それを見ると、少しストレスを感じるんだ。
  3. ニーズ:私はすっきりした環境だと、リラックスできるよ。
  4. リクエスト:(だから)もしよければ、使った後すぐに衣類をクローゼットに戻してもらえると嬉しいな。そうすると、もっと心に余裕を持てて笑顔になれると思うんだ。

夫婦の話し合いにNVCを使うといいこと

①自分自信を大事にできる

 つまり、自分自身を知ることができます。

 それは、NVCの文法では「感情」や「ニーズ」を表現するからです。

  • ニーズとは:安心感・尊重・つながり・理解・リラックス・成長など、私たち人間に共通する普遍的な欲求や価値観です。
  • 感情とは:自分がどんなものを求めているのかを教えてくれる羅針盤です。

②相手を大事にできる

NVCでは、相手が何を感じ、何を大切にしているかも配慮します。

夫婦軸づくりには欠かせない「自分も相手も大切にする」考え方を、NVCを使うと体現できます。

③相互理解が深まる

NVCは非暴力コミュニケーションの名前の通り、相手を攻撃しないで伝えあうことができます。

たとえば、「部屋が汚れている」と相手を非難するのではなく、「昨日と今日、部屋の床にシャツや本が置かれてた」と事実を具体的に述べるだけに留めることで、相手が防衛的にならずに話を聞いてくれます。

これにより、相手に対して非批判的に自分の気持ちを伝えやすくなり、相互理解が深まりやすくなります。それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう!

4. NVCで家事分担をもっとスムーズに!その方法とは?

家事分担をテーマに、NVCを使って話し合う具体例を紹介します。これにより、お互いのニーズを尊重し合い、協力的な関係を築くことができます。

リアルな会話例:NVCを使って家事について話し合う

話し合う夫婦吹き出し
  • 観察:「僕たちどちらも仕事の帰りが遅くて、夕食を食べる時間が先月よりも2時間位遅くなってるよね。」
  • 感情:「そのせいで疲れていて、食事を作るのも前ほど楽しく感じられないし、少しイライラしちゃうこともあるよ。」
  • ニーズ:「私は夜にもっと休む時間を確保したいんだ。」
  • リクエスト:「もしよかったら、週末に二人で食事を作りだめして、平日はその分リラックスする時間を増やすという形にしてみない?」

観察

観察とは、具体的な事実を述べることです。ここでは、夕食の時間が2時間遅くなっていることを具体的に述べています。

ポイント「事実」に基づいた伝え方

動画のように誰にでも確認できる情報のことを指します。これにより、相手が防衛的にならずに話を聞いてくれるようになります。

  • :「昨日と今日、部屋の床にシャツや本が置かれてた」
    • これは具体的な事実で、評価や批判を含まない表現です。

感情

感情とは、個人的に感じていることです。

「疲れていて、食事を作るのも前ほど楽しく感じられないし、少しイライラしちゃうこともあるよ。」

倦怠感・イライラなどの感情がありそうです。

そのほかにも食事の準備や片付けに関する圧迫感・うんざり感や、早く休めないことに対するもどかしさ・不快感などもあるかもしれません。

ニーズ

「私は夜にもっと休む時間を確保したいんだ。」

ここでのニーズは、休息、リラックス、などがありそうです。

ほかにもこんなニーズがあるかもしれません。

  • 気楽さ: 負担を減らし、ストレスを和らげたい
  • 健康: 適切な休息を取ることで健康を維持したい
  • 協力: パートナーと協力して家庭内の負担を分担したい
  • 楽しさ: 料理や食事の時間を楽しいものにしたい

1つの言葉や感情、同じシーンでも、その時によって自分のニーズ(自分のいのちが必要としていること)は違うかもしれないし、自分にしかわからないというところが面白いところです。

リクエスト

「もしよかったら、週末に二人で食事を作りだめして、平日はその分リラックスする時間を増やすという形にしてみない?」

たとえば、お互いにリラックスする時間を確保したいのであれば、手段で対立する必要はありません。現実的かどうかは別にして二人のニーズを満たすための手段は、発想次第でいろいろな選択肢が出てきます。

これが、NVCでは、手段では対立してもニーズでは対立しないということです。

手段として考えられる選択肢の例

  • 作業で役割を分ける:料理と皿洗いで役割を分けよう!
  • 時間で担当を分ける:週ごとに家事の担当を交代しよう!
  • 外部リソースの利用: 忙しい日はテイクアウトやデリバリー、外食を利用するのもいいかも!
  • 時間管理ツールの利用: 「料理や皿洗いのタイミングをリマインダーで管理するのはどう?
  • 家事を楽しむ工夫: 一緒に音楽を聴きながら家事をすると楽しくなるかもね!

5. 夫婦の話し合いにNVCを効果的に活用するためのコツ

夫婦の話し合いでNVCを効果的に活用するためには、いくつかのポイントとコツがあります。以下に、NVCを使う際の成功のコツを紹介します。

NVCを使うときに気をつけること

評価や判断を避ける

評価や判断は相手を防衛的にすることがあります。具体的な観察を基に話すことが重要です。

評価・判断とは、いい・悪い、おかしい・おかしくない、普通・ありえないなど

私たちは、息をするように評価・判断をする社会に生きているので、自然と評価・判断を行っています。〇〇すべき、なども同様に注意が必要です。

判断のメガネをかけた状態

夫婦の話し合いをNVCで成功させるためのコツ

自分の感情やニーズを感じること

たとえばお子さんがいる場合です。

「母親だからいつでも私が面倒を見ないと」とか、「父親だから子供たちを育てるために働かないと」と考えること。

自分の中には子供たちへの「健康」「健やかさ」「愛」「食べ物」「責任を取ること」「思いやり」などのニーズがあるなあ、と自分のニーズを感じること。

どちらをイメージした時の方が心地よいでしょうか?

自分が恐れや”こうやらねばならない”という動機で動くか、愛から動くか、この考え方に意識を向けることも大切です。

怖れからより、愛から動こう

自分の感情とニーズを明確にすること

自分が何を感じているのか、その感情を引き起こしている自分のニーズを明確にすることで、相手に自分の気持ちを正確に伝えることができます。

相手の感情とニーズを尊重する

相手の感情やニーズを理解しようとし、それを尊重する姿勢が大切です。

自分を満たす。相手を満たす。

相手を理解する方法は、こちらも参考になります。

5. NVCがもたらす夫婦関係のポジティブな変化

NVCを実践することで、夫婦関係にポジティブな変化が生まれます。以下に、その具体的な変化を紹介します。

信頼関係が深まる

NVCを使うことで、お互いの感情とニーズを理解し合うことができ、信頼関係が深まります。

対立が減る

自分の気持ちに正直になり、ニーズでつながることができるようになりますし、具体的なリクエストを通じて何を求めているかも明確になるために誤解と対立を減らすことができます。

ストレスが減る

感情やニーズを正直に表現することで、内面的なストレスが軽減されます。

クリエイティブな関係が生まれる

お互いのニーズを叶えあうことを考えられるようになると、手段に固執して対立したり傷つけあう必要がなくなります。そして、世界で唯一のふたりで創る、創造的な夫婦軸を作ることができます。

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